「人が採れない」「やっと採れてもすぐ辞める」。
IT企業が直面する深刻な採用難。
その突破口が、外国人エンジニアの採用です。
とはいえ、文化や言葉の壁、ビザ手続き、現場マネジメント…
不安要素は山積み。
ですが、正しい知識と体制があれば、彼らは“定着し、活躍し、貢献する人材”に育ちます。
特に「採用してもすぐ辞めてしまう」「新卒マネジメントに限界を感じる」と悩むIT企業の方にこそ、読んでほしい内容です。

第1章|なぜ今、外国人エンジニアなのか?人材確保の現実と採用トレンド

◆ IT企業が直面する人材不足の現実
「求人を出しても、応募が来ない」「来ても3ヶ月で辞める」
IT企業の多くがこうした声を上げています。
特にエンジニア職では、優秀な人材の取り合いが常態化しています。
地元の理系学生は東京や海外志向が強く、採用ターゲットの母数が極端に少ないのが現状です。
加えて、ITスキルを持つ中途人材も限られており、採用に苦戦する企業が続出しています。
求人媒体に出稿しても、成果は数件の応募止まり。
仮に内定を出しても、内定辞退や早期離職が後を絶ちません。
このような中、いま新たな選択肢として注目されているのが外国人エンジニアの採用です。
◆ 新卒や若手の早期離職が常態化している背景
なぜ、せっかく採用した若手が辞めてしまうのか?
その理由は「期待とのギャップ」にあります。
新卒社員は「やりがい」や「自己成長」を重視する傾向にあり、OJT任せや即戦力重視の育成スタイルでは対応しきれません。
また、教育担当者が日々の業務に追われていると、細かなフォローができず、結果として「放置された」と感じてしまうケースもあります。
離職の芽は、入社後1ヶ月以内にすでに生まれているのです。
この状況で必要なのは、「育成前提の採用体制」です。
しかし、日本人新卒だけでは供給が追いつかない今、視野をグローバルに広げることが現実的な解決策になってきています。
◆ 外国人エンジニア採用に注目が集まる理由
外国人エンジニアの採用が増えている背景には、次の3つの要因があります。
- 即戦力が豊富:インド、ベトナム、フィリピンなどの国では、コンピュータサイエンス教育が進んでおり、大学でPythonやJavaを学んだ実務経験者が多く存在します。
- 日本就労への強い意欲:彼らは「日本でスキルアップしたい」「安定的な環境で働きたい」と考えており、離職リスクが意外と低い点も特徴です。
- 企業ブランディングにもなる:グローバル人材を雇用することは、企業の多様性(ダイバーシティ)への取り組みとして、顧客や取引先に好印象を与える効果もあります。
外国人エンジニアを積極採用しているベンチャー企業やスタートアップが増加中です。
◆ 採用リスクと期待できる効果の整理
もちろん、外国人採用にはリスクもあります。
たとえば:
- ビザ手続きの煩雑さ
- 日本語コミュニケーションの壁
- 文化的ギャップによる離職のリスク
しかし、これらのリスクは、事前準備と受け入れ体制を整えることで十分にカバーできます。
実際に、受け入れ準備を徹底している企業では、外国人エンジニアが3年以上定着し、チームの中心メンバーとして活躍している事例も多く存在します。
また、日本人社員にとっても「英語でのやり取り」や「異文化理解」を通じて、国際的な視野が育まれるという副次的なメリットもあります。

第2章|これだけは知っておきたい!外国人採用のビザ取得と手続きの実務

「外国人エンジニアを採用したい」と考えたとき、まず最初に立ちはだかるのがビザという法的な壁です。
多くの企業が、書類の煩雑さや専門知識の難解さに圧倒され、採用に踏み切れずにいます。
しかし、このプロセスを正しく理解し、適切な手続きを行えば、外国人エンジニアは法的に問題なく日本で働くことが可能になります。
むしろ、ここでしっかりとビザ取得に関する知識を持ち、準備を整えられるかどうかが、外国人採用の成功可否を左右すると言っても過言ではありません。
◆ 技術・人文知識・国際業務ビザとは何か?
外国人エンジニアが日本で働くために最も一般的に取得するのが、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格です。
このビザは、日本の企業において技術職や事務系専門職に就く外国人に付与されるものです。
例えば、システムエンジニア、アプリ開発者、ウェブデザイナー、データアナリストなどがこのカテゴリに該当します。
また、マーケティング担当者や翻訳・通訳なども含まれることがあります。
このビザを取得するためには、いくつかの明確な条件をクリアする必要があります。
主に求められるのは以下の3点です。
- 専門知識の裏付けとなる学歴
- 職務内容と学歴・職歴の整合性
- 雇用契約の具体性と報酬の妥当性
たとえば、大学や専門学校でコンピュータサイエンスや情報工学を学んだことが証明でき、実際の業務内容がそれに合致している場合には、ビザ取得の可能性が高まります。
一方で、経済学部出身の人がプログラマーとして雇用される場合、学歴との関連性が薄いため審査が厳しくなります。
また、日本の法令では、外国人であっても労働条件の差別は許されていないため、日本人と同等以上の報酬を提示しているかも厳しくチェックされます。
一般的に月給で20万円以上が目安とされており、それを下回る金額だと「不法就労を助長する可能性がある」と見なされる恐れがあります。
このビザがなければ、企業は法的に外国人を雇用することはできません。
そのため、採用の検討段階から、対象者がこのビザの取得要件を満たしているかを確認することが不可欠です。
内定を出す前に“ビザ取得の見通し”を見極めることが、後のトラブル回避につながります。
◆ 採用から入社までの実務フローとは?

外国人エンジニアの採用が決まった後、実際に働き始めるまでにはいくつかの重要なステップがあります。
企業側としては、これらを正確に把握し、スムーズに進行させることが求められます。
まず最初に行うべきは、雇用契約書や内定通知書の準備です。
これらの書類には、勤務開始日、勤務場所、業務内容、報酬、労働時間、休日などが明確に記載されている必要があります。
曖昧な記述や記入漏れは、審査に悪影響を与える原因になります。
次に行うのが、「在留資格認定証明書(COE)」の申請です。
これは、法務省に対して「この外国人は日本で就労する要件を満たしている」ということを証明するもので、入国前の最重要書類といえます。
申請は原則として日本側の受け入れ機関(つまり企業)が行います。
COEの審査期間は通常1〜3ヶ月程度で、この期間中に法務省は企業の信用性や業務内容の妥当性、雇用予定者の経歴、給与水準などを精査します。
審査に通過するとCOEが発行され、これをもとに本人は母国の日本大使館または領事館で就労ビザを申請し、取得後に日本へ入国します。
入国後には、空港で「在留カード」が交付され、これにより正式に日本での就労が可能になります。
ここまでの流れには、平均で2〜4ヶ月程度かかることが多く、採用スケジュールには余裕を持つことが重要です。
◆ よくあるトラブルとその予防策
ビザ取得におけるトラブルは、実際の現場で頻繁に発生しています。
中でも多いのは、給与設定ミス、学歴と職務内容の不一致、書類不備の3つです。
まず、「給与が低すぎて不許可になった」というケースは非常に多く見られます。
外国人であるからという理由で日本人より低い給与を提示した場合、不許可になるだけでなく、最悪の場合は企業自体が不法就労助長の疑いを持たれることさえあります。
明確な水準は法律で決まっているわけではありませんが、実務上は月20万円以上が目安とされています。
次に、職務内容と学歴・職歴の整合性が取れていない場合。
たとえば、外国人が経済学部卒でありながら、プログラマーとして雇用される場合、学歴との整合性に欠けるとして、審査で不許可になることがあります。
こうしたケースでは、職歴や専門スキルが十分であることを追加資料で示すなどの工夫が必要です。
また、単純な書類の記載ミスや提出漏れも、重大なトラブルの原因になります。
審査官は提出書類の内容を非常に細かく確認するため、誤字脱字、矛盾した記述、押印漏れなどにも注意が必要です。
最悪の場合、再提出となり、採用スケジュールが大幅にずれ込むことになります。
これらのリスクを避けるためには、ビザ申請業務に慣れた専門家の支援を受けることが強く推奨されます。
◆ 行政書士や支援機関をうまく活用する
ビザ申請は、企業の採用担当者が独力で対応するには、あまりに専門的かつ煩雑です。
そこで活用したいのが、行政書士や地域の国際交流財団などの支援機関です。
必要に応じて多言語での対応や無料相談も実施しており、初めて外国人を採用する企業には非常に心強い存在です。
専門家に依頼することで、ミスを未然に防ぎ、スムーズな手続きを実現できます。
採用担当者がビザ手続きに追われることで、本来注力すべき人材育成や組織開発に手が回らなくなるケースもあります。
そうした事態を避けるためにも、法務的な対応は積極的にアウトソースし、現場は“育成”に集中する体制を構築することが理想です。
第3章|文化の違いが離職を生む?多国籍チームのためのマネジメント術

外国人エンジニアの採用が決まり、無事に入社までたどり着いたとしても、それで安心してはいけません。
多くの企業が直面する次なる課題は、彼らが職場に「馴染めるかどうか」、つまり「文化的なギャップをどう乗り越えるか」にあります。
実際、「技術的なスキルは問題ないけれど、すぐに辞めてしまった」というケースの多くは、業務内容や能力の問題ではなく、文化やコミュニケーションスタイルの違いによるミスマッチが原因です。
日本人社員にとっては当たり前のことが、外国人社員にとってはストレスになる。
こうした“見えない壁”が、知らず知らずのうちに彼らを孤立させ、最終的には離職につながってしまうのです。
本章では、そうしたギャップをいかにして事前に察知し、適切にマネジメントしていくかを、実践的な観点から詳しく解説します。
◆ 「Yes」は同意とは限らない:コミュニケーションのズレを防ぐには
日本の職場では、曖昧な表現や空気を読む文化が根強くあります。
しかし、外国人社員にその感覚を求めるのは酷というもの。
とりわけ英語圏以外から来たエンジニアにとって、「Yes」と答えることは、必ずしも“理解した”とか“賛成する”という意味ではありません。
たとえば、フィリピンやインドネシアの文化では、相手を否定することは非礼とされることが多く、「Yes」と答えてその場を丸く収めようとする傾向があります。
指示された内容をそのまま受け止め、「Yes」と返答しても、実際には内容を十分に理解していない、あるいは納得していないこともあるのです。
このようなケースでは、プロジェクトの進行に重大な遅れを生じさせたり、クライアントに対して誤った対応をしてしまうリスクも高まります。
トラブルが起こって初めて「理解できていなかったのか」と気づくこともあり、そのときには既に取り返しのつかない事態になっていることも少なくありません。
したがって、多国籍チームにおいては、口頭での確認に加えて、明文化された指示書やタスク一覧を共有することが必須です。
内容はなるべく簡潔に、やさしい日本語か英語で記載し、曖昧な表現は避けましょう。
◆ 宗教・食文化・時間感覚の違いにどう配慮するか
外国人エンジニアの採用において、宗教や食文化、さらには時間に対する感覚の違いは、意外にも大きな摩擦の原因になります。
これらは非常に繊細なテーマであり、「知らなかった」「考えたこともなかった」という理由で配慮を怠ると、当人にとっては“尊厳を軽視された”と感じる事態になりかねません。
例えばイスラム教徒であれば、1日に5回の礼拝が宗教上の義務としてあります。
にもかかわらず、昼休み以外に退席すると注意されたり、礼拝スペースが用意されていなかったりすると、強い疎外感を感じてしまいます。
また、ラマダン(断食月)中は日中に飲食を控える必要があり、周囲が昼食を囲んで談笑している中に一人だけ参加できない状況は、本人にとって精神的なストレスとなることもあります。
さらに、ベジタリアンやハラル食など、食の制約がある人への対応も必要です。
会社でランチを支給する場合や懇親会を開く場合には、対象者が安心して食事できる選択肢があるかどうかを事前に確認しておくことが望ましいでしょう。
また、時間感覚の違いも無視できません。
日本では「5分前行動」が美徳とされ、会議や集合時刻に遅れることはマナー違反とされます。
しかし、国によっては「時間はあくまで目安」という文化が根づいており、10分程度の遅刻が大きな問題にならない国もあります。
このような文化差を前提に、いきなり「常識でしょ」「なぜできないのか」と叱責してしまうと、相手は「価値観を否定された」と感じます。
これはパワハラや差別と受け取られるリスクを孕んでおり、最悪の場合、離職や労務トラブルに発展する可能性もあるのです。
だからこそ、マネジメント側は“多文化における前提の違い”を理解し、「違っていても受け入れる姿勢」をチーム全体に浸透させる必要があります。
定期的に異文化理解の勉強会や社内セミナーを開催するのも効果的です。
◆ 「相談できない」が最大のストレス:メンター・バディ制度の導入を

文化的な違いに起因するストレスの中でも、最も見過ごされがちなのが「孤立感」です。
特に日本企業は、社員同士の関係が業務上の接点に偏りがちで、私語や雑談の少ない職場も多く存在します。
外国人エンジニアが直面する最大の壁は、「困っても誰に聞けばいいのかわからない」「質問するのが申し訳ない」という不安です。
日本語に不安があると、ちょっとした会話にも勇気が要りますし、「忙しそうだから声をかけづらい」と感じることもあります。
このような状況を解消するために、多くの企業が取り入れているのが「バディ制度」と「メンター制度」です。
業務の細かなルールや社内の暗黙知も、バディから聞くことでスムーズに理解が進みます。
一方、メンター制度はより心理的な支援を目的とし、一定期間定期的に1on1の時間を設け、業務以外の不安や将来のキャリア相談も含めたサポートを行います。
特に外国人エンジニアにとっては、「自分の味方がいる」という感覚が心の支えとなり、職場に対する信頼感や帰属意識が大きく向上します。
このような仕組みは、日本人社員にとっても有効であり、組織全体のチームワーク強化にもつながります。
◆ 人間関係づくりの工夫がチームの温度を変える
どれだけ制度を整えても、結局のところ「働く人の心」を動かすのは、“人間関係”です。
特に多国籍チームでは、「仕事以外の場でどれだけ自然に交流できるか」が、職場への親近感やストレスの軽減に直結します。
そのため、多くの成功企業では、月に1回程度の「国際交流ランチ」や、「多文化チーム懇親会」などを定期的に開催しています。
社員がそれぞれの国の料理を持ち寄るポットラック形式のランチや、簡単な母国紹介プレゼンなどを取り入れることで、楽しく互いの文化を知り合うことができます。
また、休日に希望者だけで集まるレクリエーション活動も効果的です。
サイクリング、ボウリング、地域イベントへの参加など、仕事から離れた場所での自然な会話や笑いが、チームの一体感を生み出します。
さらに、社内チャットツールに“雑談チャネル”を設けたり、業務時間内に15分だけ英語で話す「カジュアルトークタイム」を設けたりするなど、業務以外の交流機会を“仕組みとして”設けることが有効です。
これにより、言語に自信がない社員も、日常的にコミュニケーションの練習ができ、心の距離が縮まっていきます。

第4章|IT企業の成功事例に学ぶ、外国人エンジニア定着のコツ

「外国人エンジニアの採用には興味がある。でも、自社で本当にうまくいくのだろうか…」
そうした不安を抱えるIT企業は少なくありません。
実際、多国籍人材の受け入れには言語、文化、マネジメントなど複雑な課題が絡みます。
しかし、その一方で、すでに外国人エンジニアの採用と定着に成功している企業は存在します。
本章では、そうした企業がどのような工夫を凝らし、何を通じて離職率の低下とチーム力の向上を実現したのか、実際の事例をもとに詳しく解説します。
ポイントは、単なる「受け入れ」ではなく、「ともに働く仲間としての関係性づくり」です。
◆ 成功事例:福岡市内・中小IT企業S社の取り組み
福岡市中心部に本社を構える中小企業S社は、もともと10人程度のエンジニアチームを有するアプリ開発会社です。
地元の若手人材の確保が年々難しくなってきたことから、海外人材への関心を高め、2020年、初めてフィリピンから2名の外国人エンジニアを採用する決断を下しました。
当初、英語でのやり取りに課題を抱えていた同社では、「とにかく日常会話に困らない環境づくり」を第一優先としました。
まずはSlackに英語専用のチャネルを設け、日本人社員も積極的に英語で発信するよう促しました。
英語に慣れていないスタッフも多かったため、Google翻訳やDeepLといった翻訳ツールの使用を業務の一部としてルール化し、「誤訳を恐れない文化」を醸成する工夫も取り入れました。
さらに、入社後3ヶ月間は、日本人の若手社員が“通訳係”を兼任し、日常的な業務指示や雑談も丁寧にサポートする体制を構築しました。
実際のコードレビューやペアプログラミングも、英語を中心とした指示に切り替え、「言語が足かせにならない開発環境」を目指しました。
こうした地道な努力の積み重ねにより、2名のフィリピン人エンジニアはスムーズにチームに溶け込みました。
入社から3年が経過した現在も、2人とも現役で活躍し続けており、うち1名はチームリーダーとして新人教育にも関わるポジションに就いています。
S社ではこの成功体験をきっかけに、今ではベトナム、インド、インドネシアからの採用も進めており、エンジニアの約3割が外国籍という、福岡ではまだ少ない“多国籍IT企業”として注目されています。
◆ 離職を防ぐ最初の3ヶ月:オンボーディングの工夫
外国人エンジニアが「この会社で長く働こう」と思えるかどうかは、入社から最初の3ヶ月にかかっていると言っても過言ではありません。
S社では、入社初日にオリエンテーションを実施し、業務フロー、チーム構成、社内ルール、日本での生活情報などを多言語資料で丁寧に案内しました。
さらに、初日には「なんでも質問していいセッション」を設け、言語の壁を越えて互いを知る時間を意識的につくりました。
1ヶ月目には、週に1回のペースで1on1ミーティングを実施。
2ヶ月目からは、徐々にチームプロジェクトへの本格的な参画を開始。
最初はテスト設計や保守業務といった比較的理解しやすいタスクから始め、段階的に負荷と責任を増やしていきました。
3ヶ月目には、フィードバック面談を実施。外国人社員自身が「自分が何を期待されているのか」「どう評価されているのか」を明確に認識できるよう、言語・文化に配慮したフィードバックツール(翻訳サポート付きの評価シートなど)を活用しました。
このように、「段階的・双方向・個別最適化されたオンボーディング」が、外国人エンジニアの定着率を大きく左右する要素であることがわかります。
◆ 給与体系とキャリアパス:未来が見える設計を
多くの企業が見落としがちなポイントの一つが、「外国人エンジニアにとってのキャリアビジョンの明示」です。
単に「技術者として働ける場所」ではなく、「自分の人生を預けられるステージ」としての企業であると認識してもらうためには、給与体系とキャリアパスを明確に示す必要があります。
S社では、外国人社員を“労働力”としてではなく、“将来の戦力”として位置づけました。
具体的には、日本人社員と完全同等の給与テーブルを導入し、入社年数・スキルレベル・貢献度に応じた昇給ルールを策定しました。
さらに、1年後にはサブリーダー、3年後にはチームリーダー、その後はプロジェクトマネージャーや技術責任者を目指せる明確なポジション設計を文書化し、入社時に説明しました。
外国人エンジニアにとっては、「自分はこの会社でどこまでいけるのか」「3年後の自分の姿が見えるか」がモチベーションに直結します。
この点が曖昧なままだと、「いつまでたっても下請け作業ばかりかも…」という不安を生み、早期離職の温床になってしまうのです。
S社のように、未来に向けた「階段」が可視化されていることで、外国人エンジニアは“腰掛け”ではなく、“自分の人生を築く場”として会社に深くコミットするようになります。
◆ 「働く」だけじゃない。生活支援が定着を後押しする
外国人エンジニアの職場での活躍を支えるためには、就労環境の整備と同じくらい生活支援の仕組みが重要です。
S社では、採用決定と同時に「生活立ち上げ支援チーム」を編成。
住宅探しのサポートでは、外国人の入居に理解のある不動産会社との連携を強化し、通勤距離や家賃の希望に合う物件を数パターン紹介できる体制を整えました。
また、日本語学習については、週1回のオンラインレッスン費用を会社が一部補助し、業務外でも“学ぶ楽しさ”を感じられるように工夫しました。
言語の壁が下がることで、日常生活でもスムーズに行動できるようになり、精神的な安定にもつながったといいます。
その他にも、銀行口座の開設、携帯電話の契約、役所手続きの同行など、入社初期の“見えない不安”を一つずつ解消する伴走型のサポートを徹底。
こうした支援が、「会社が自分を大切にしてくれている」という信頼感に直結し、離職率の低下を生み出しているのです。
◆ 成功企業に共通する“3つの要素”
複数の企業で共通して見られた成功要素を、あえて端的に言えば次の3点に集約されます。
- 心理的安全性のあるマネジメント
言語の壁や文化の違いを前提に、否定されない・馬鹿にされない・受け入れられる環境を整えること。 - 将来を見通せる制度設計
給与、昇格、スキルアップ、ポジションなどのキャリアルートを明示すること。 - 生活まで含めた総合支援体制
働くことだけでなく、暮らすこと・生きることへの配慮が“人をつなぎとめる鍵”になる。
この3要素が揃ったとき、初めて「外国人エンジニアが安心して働き、成長し、長く貢献する」環境が整ったと言えるのです。
まとめ
IT企業にとって、深刻な人材不足を打開する手段として注目されているのが「外国人エンジニアの採用」です。
外国人は即戦力として優れ、定着率も高く、多様性の観点から企業ブランディングにも貢献します。
ただし、ビザ取得の実務や文化的な違いによる離職リスクなど、導入には注意点も多く存在します。
この記事では、採用からビザ手続き、文化配慮、マネジメント、そして企業S社の成功事例までを詳しく解説しました。
特に、オンボーディングの設計、明確なキャリアパス、生活支援の3点を整えることで、外国人エンジニアが安心して活躍できる環境をつくることが可能です。
採って終わりではなく「育てて残す」体制づくりが、これからの採用の鍵になります。



