【事例付き】離職率を半減させた福岡IT企業の採用データ分析&活用実践例

離職率を半減させた福岡IT企業の採用データ分析&活用実践例5

「せっかく採用したのに、3ヶ月で退職された……」

福岡のIT企業から、こうした悩みを頻繁に聞きます。

人手不足の中でようやく確保した貴重な人材が、短期間で会社を去ってしまう。

これは、採用コストの無駄というだけでなく、既存社員のモチベーションやチームの生産性にも影響します。

では、その原因はどこにあるのでしょうか?

「最近の若手は根性がない」「うちの社風に合わなかっただけ」など、個人の資質や相性に責任を押し付けてはいませんか?

実際、多くの企業で“採用のプロセスそのもの”がブラックボックス化しており、数値的根拠に基づいた分析や改善がほとんどなされていないのが実態です。

この記事では、実際に離職率を改善した福岡のIT企業の事例を交えながら、「なぜ人が定着しないのか」「どのプロセスで見直せば改善できるのか」といった疑問に、データを用いた実践的なアプローチで答えます。

属人的で感覚に頼った採用から脱却し、誰でも成果を出せる再現性の高い採用体制をつくるためのヒントを得ていただけるはずです。

目次

第1章|離職率が高止まりする本当の理由|感覚と勘に頼った採用はもう限界

福岡のIT業界では、ここ数年で離職率の高さが経営課題として顕在化しています。

特に新卒や第二新卒の若手層においては、入社後3ヶ月以内に退職してしまうケースも珍しくありません。

これは単に「見極めの失敗」と片付けられる話ではなく、そもそもの採用プロセスに抜本的な設計ミスがある可能性を示唆しています。

多くの中小企業では、面接の判断が面接官個人の主観に依存しがちです。

「なんとなく良さそう」「受け答えの印象がいい」など、感覚的な判断により合否を決めてしまい、結果的に入社後のミスマッチを引き起こします。

さらに、そもそも何をもって“採用成功”とするかという明確な定義がないまま、漠然と「いい人が来てほしい」という願望で採用活動を進めているケースも多く見られます。

採用活動全体を数値で管理する文化が根付いておらず、プロセスのどこにボトルネックがあるかがわからないまま、結果だけを見て一喜一憂している状態です。

採用活動には、記録されていない“空白ゾーン”が多数存在します。

たとえば、書類選考の判断理由や面接時の質問内容・評価基準が明文化されていない企業も少なくありません。

こうした属人化された採用は、再現性がなく、振り返りや改善が困難です。

データがなければ、問題の本質も見えません。

勘と経験からの脱却こそが、離職率を改善し、組織の持続的成長を支える最初の一歩となるのです。

第2章|採用プロセスを数値で見える化する|データ分析で何がわかるのか?

採用活動の成否を分けるのは、「採ってから考える」ではなく「採る前に見抜く」力です。

しかし、その“見抜く力”も、属人的な勘や経験に依存していては、再現性のある成果にはつながりません。

だからこそ、プロセス全体を数値で可視化することが必要なのです。

まず、採用のボトルネックを把握するためには、基本的なKPI(重要業績評価指標)を設定することから始めます。

たとえば以下のような指標が有効です:

  • エントリー数(応募者の母数)
  • 書類選考通過率(質の高い応募者を絞れているか)
  • 一次・最終面接通過率(面接官の判断精度)
  • 内定承諾率(オファー後の辞退率)
  • 入社後3ヶ月・6ヶ月・1年の定着率(採用の本当の成否)

これらの指標を時系列で管理すれば、「どのステップでミスマッチが生まれているか」「改善すべきタイミングはどこか」が浮き彫りになります。

たとえば、書類選考通過率が高いにもかかわらず、内定承諾率が著しく低い場合、企業の魅力が正しく伝わっていない可能性があります。

一方、面接の通過率が低すぎる場合は、選考基準が厳しすぎる、あるいは面接官の評価がバラバラといった課題も考えられます。

さらに、面接官ごとの通過率や評価傾向を分析することで、社内に存在する“無意識バイアス”の発見にもつながります。

たとえば、ある面接官は論理的なタイプを高く評価し、別の面接官は情熱的なタイプに偏っている。

これを放置すると、組織全体で採用する人物像に一貫性がなくなり、カルチャーのばらつきが起きやすくなります。

また、採用においては“入社後の活躍”まで含めて初めて成功といえます。

入社後のパフォーマンスデータ(業務遂行能力、定性評価、上司からのフィードバックなど)と採用時の評価を突き合わせることで、「どんな人物が定着・活躍するのか」という“採用成功パターン”を発見することができます。

オンボーディングの過程でも、定量的なデータを蓄積することが重要です。

入社から1週間・1ヶ月・3ヶ月などのタイミングで、本人の自己評価や上司評価、業務への適応度などを記録すれば、早期離職の兆候を見逃さずにキャッチできます。

その結果、適切なフォローアップや配置転換、育成支援が可能になります。

そして何より、こうした採用・定着に関する数値をもとにした議論は、感情論に流されずに意思決定を行えるという大きなメリットがあります。

「前にも同じような人材で失敗した」「今回はうまくいくはずだ」といった曖昧な意見ではなく、事実ベースで「何を改善するべきか」が明確になり、社内の合意形成もスムーズに進みます。

採用の“見える化”とは、単に表計算ソフトに数値を打ち込むことではありません。

目的は、「誰が、どこで、なぜ、うまくいかなかったのか(あるいはうまくいったのか)」を解き明かし、次の打ち手に落とし込むこと。

そのための判断材料を手に入れることこそが、データ活用の本質なのです。

第3章|離職率を下げた企業の具体的施策とは?データ起点の成功アプローチ

実際に離職率の改善に成功している福岡のIT企業では、採用プロセスを細かく分解し、定量的なデータに基づいて戦略的に改善を進めています。

ここでは3つの事例を紹介し、それぞれの工夫と成果について見ていきます。

事例①:カルチャーフィット診断の導入で3ヶ月離職ゼロを達成

ある企業では、従来の面接では見抜けなかった「価値観のズレ」が早期離職の原因であると分析しました。

そこで採用時に独自のカルチャーフィット診断を導入。

これは、事前に職場の価値観や文化を可視化したうえで、応募者にも同様の診断を行い、マッチ度を数値で測る仕組みです。

この施策によって、入社後に「こんなはずじゃなかった」というズレがなくなり、実際に導入後半年間の3ヶ月離職者はゼロとなりました。

事例②:面接の質問をスコアリングして標準化、内定辞退率が半減

別の企業では、面接時の評価基準が面接官によってバラバラであったため、合否の基準が曖昧でした。

これを改善すべく、質問内容をあらかじめ定型化し、各回答を5段階で評価するスコアリングシートを導入しました。

面接官全員が同じ評価基準で判断することで、合否の一貫性が生まれ、「なぜ不合格なのか」「なぜこの人に内定を出すのか」がチーム内でも共有しやすくなりました。

結果的に、候補者とのミスマッチが減り、内定辞退率も50%から25%へと大きく改善しました。

事例③:オンボーディング施策を強化し、定着率が1.7倍に

あるスタートアップでは、入社後のフォローが属人化していたことが課題でした。

そこで、入社後1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の節目ごとに業務内容のチェックリストと満足度アンケートを実施。

加えて、直属の上司との1on1ミーティングを月2回実施するようにしたところ、定着率が以前の1.7倍にまで向上しました。

どの企業にも共通するのは、「記録」「定点観測」「改善ループ」の3点を継続している点です。

成功は一度限りではなく、PDCAを回しながら継続的に改善する中で実現しています。

第4章|「勘と経験の採用」から脱却するためのファーストステップ

データを活用した採用に興味はあるものの、「何から始めればいいかわからない」という声も多く聞かれます。

ここでは、今日から始められる具体的なステップをご紹介します。

ステップ1:まずは「3つの数値」を記録する

最初からすべてをデータ化しようとする必要はありません。

まずは「エントリー数」「一次面接通過率」「3ヶ月離職率」の3つに絞って記録してみましょう。

これだけでも、採用活動のどこに課題があるのかを発見する手がかりになります。

ステップ2:スプレッドシートで管理を始める

難しいツールを使う必要はありません。

Googleスプレッドシートなどで、日付、候補者名、評価スコア、ステータス、離職状況などを一覧化するだけでも十分です。

無料で始められ、社内でも共有しやすい形式です。

ステップ3:必要に応じてツールを導入する

一定数以上の採用が発生している場合は、ATS(採用管理システム)やAIを活用したスクリーニングツールの導入も検討できます。

たとえば、HRMOS、ジョブカン採用管理、HERPなどは中小企業でも導入しやすく、応募者管理やスコアリングが効率化されます。

ステップ4:現場にデータを共有する文化をつくる

採用は人事部門だけの仕事ではありません。

現場のマネージャーや面接官ともデータを共有し、「どのような人が活躍しているのか、

「どんな特性が離職につながっているのか」を一緒に考える文化を醸成しましょう。

◆まとめ

採用とは、単に「人を集める」だけではなく、「その人が長く活躍するための土台を整えるプロセス」です。

属人的な判断や場当たり的な対応から脱却し、数値をもとに継続的な改善を重ねることで、組織全体の採用力が高まります。

特に福岡の中小IT企業においては、人材流動性が高く、採用市場が過熱している中で、いかに“採ってからのミスマッチ”を防ぐかが重要です。

まずは「何が見えていないのか」を明確にすること。

そこからすべてが始まります。

データは嘘をつきません。

そして、データを読み解き、行動に移す仕組みさえ整えば、どんな企業でも離職率を下げることは十分に可能です。

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