「給料も福利厚生も悪くないのに、なぜか応募が来ない」
そんな悩みを抱えていませんか?
実は今、多くの企業が“スペックでは勝っているのに選ばれない”というジレンマに直面しています。
原因はシンプルで、「伝え方」に問題があるのです。
このマニュアルでは、人が集まり、定着し、成長していく企業になるために必要な「採用ブランディング」の具体的な手法を、段階ごとに解説していきます。

第1章|なぜ今「採用ブランディング」が必要なのか?

採用を取り巻く環境の劇的な変化
人口減少、価値観の多様化、SNSによる情報の可視化。
企業を取り巻く採用環境は、ここ10年で激変しました。
もはや“待ちの採用”では通用せず、企業側から「選ばれる努力」が求められています。
求職者は企業を「就職先」ではなく「人生の舞台」として選びます。
だからこそ、企業のビジョンや人間関係、働き方、育成環境など、見えにくい部分こそが重要になっているのです。
求職者が求めているのは「条件」ではなく「共感」
今の若手人材が企業選びで最も重視するのは、「給与」や「休日数」ではありません。
- どんな仲間と働けるのか
- どんな想いを持った会社なのか
- 自分が成長できる環境があるのか
これらに“共感”できるかどうかが、入社の意思決定に大きく影響しています。
「採用広報」と「採用ブランディング」の違い
| 種別 | 目的 | 内容 | 時間軸 |
|---|---|---|---|
| 採用広報 | 応募の獲得 | 募集要項の告知や情報発信 | 短期 |
| 採用ブランディング | 応募の質・定着の向上 | 理念・文化・人を可視化し“共感”を生む | 中長期 |
採用ブランディングは「今すぐの応募」よりも、「いつか働きたいと思わせる」ことに重きを置く戦略です。
採用ブランディングが定着率にも影響する理由
企業の理念やカルチャーを事前に“見える化”することで、ミスマッチが減ります。
共感した人材だけが応募し、入社後も早期離職しづらくなるのです。
第2章|採用ブランディングの土台づくり

“伝えない病”にかかっていませんか?
どれだけ魅力的な理念や文化を持っていても、それが外部に伝わっていなければ、存在しないのと同じです。
多くの中小企業は、「実際にはいい会社」であるにもかかわらず、自社の強みを正しく発信できていないために、求職者から見つけてもらえず、選ばれていません。
この“伝えない病”は、経営者の「うちは特別なことしてないから……」という謙遜や、「言わなくてもわかるだろう」という思い込みによって助長されます。
しかし、求職者には企業の内情が見えません。
だからこそ、自社の文化や理念、働く人の姿勢を“言語化”し、“見える化”していく努力が必要です。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の再定義
採用ブランディングの土台として欠かせないのがMVV。
すなわち「ミッション(存在意義)」「ビジョン(目指す未来)」「バリュー(行動指針)」の再定義です。
これは単なるスローガンやポスター用の言葉ではありません。
企業文化を言語化し、求職者がその会社に“共感”するための軸となる要素です。
再定義にあたっては、経営層だけでなく、現場の声を反映させることが重要です。
たとえば、「どんなときにこの会社で働いていてよかったと感じたか」「日々の仕事の中で自然と大切にしている価値観は何か」など、社員の具体的な体験を引き出しながら言語化していくことで、リアリティのあるMVVが完成します。
このMVVがしっかりしていれば、採用のあらゆる場面(採用ページ、求人票、面接でのトーク、入社後の教育)すべてに一貫性が生まれ、求職者に安心感と信頼感を与えることができます。

理念浸透のワークショップと社員インタビュー
採用ブランディングにおいて、社内の温度差は致命的です。
いくら採用ページで素晴らしい理念を掲げていても、実際に社員がその理念を語れなければ、求職者はギャップを感じ、離職につながってしまいます。
だからこそ重要なのが「インナーブランディング」です。
社内に理念を浸透させ、社員が自分の言葉で語れるようにすることです。
たとえば、理念浸透のために以下のようなアクションを設計しましょう。
- 月1回の全体ミーティングでビジョンに沿った取り組み事例を共有
- 新入社員研修でMVVの背景をストーリーで伝える
- 経営者が定期的に現場と対話する「カジュアルミーティング」を開催
- 社員インタビューを実施し、理念と結びつけた個人の体験を社内外に発信
こうした活動を通じて、理念は単なる“言葉”から“行動指針”へと進化していきます。
特に社員インタビューは、求職者にとって最もリアルな“判断材料”になります。
制度や待遇では見えない「その会社らしさ」を伝える、極めて強力なコンテンツです。
若手・新卒目線での価値訴求の再設計
若手や新卒の求職者にとって、企業文化や働き方の雰囲気は非常に重要な選択基準です。
ところが、採用担当者が語るメッセージが「風通しが良い」「アットホームな職場」など、抽象的でありきたりな言葉に終始してしまうケースが少なくありません。
大切なのは、「求職者の目線で伝えること」です。
つまり、企業が伝えたいことではなく、求職者が知りたいことをベースに情報を再構成する必要があります。
たとえば「風通しが良い」という価値観を伝えるなら、次のような具体例に置き換えます。
- 「入社1年目でも社長に意見が言える場がある」
- 「Slackで全社員が自由にアイデアを発信している」
また、「成長できる環境」という抽象的な表現も、次のように変換できます。
- 「週1回の1on1で上司とキャリアの話ができる」
- 「3ヶ月に一度の社内発表会で、自分の成長を言語化できる」
このように、求職者の不安や期待に寄り添った形で表現することで、初めて「共感」が生まれます。
第3章|“人が集まる会社”になるための発信戦略

採用ブランディングの土台が整ったら、次は「どうやって伝えるか」のフェーズに移ります。
企業の魅力は、表現しなければ届きません。
しかし、やみくもに情報を出せばよいわけでもなく、「どこで、誰に、何を、どう伝えるか」という戦略が重要になります。
今の求職者は、求人票1枚だけで応募を決める時代ではありません。
そこで本章では、求職者に“この会社で働きたい”と感じてもらうために欠かせない、発信の設計と実践方法について詳しく解説します。

採用LPに載せるべき5大コンテンツとは?
採用LP(ランディングページ)は、求職者が最初に触れる企業の“顔”です。
このページで印象が決まるといっても過言ではありません。
だからこそ、情報設計は極めて重要です。
特に次の5つの要素は、すべての採用LPに必ず盛り込むべきコンテンツです。
1. 企業のストーリー
ただの会社概要ではなく、「なぜこの会社が生まれたのか」「創業者はどんな想いで立ち上げたのか」「これまでどんな壁を越えてきたのか」など、ストーリー性のある紹介が求められます。
人は“物語”に共感する生き物です。
理念を語るだけでなく、それに至る背景やエピソードを語ることで、企業の温度感や信頼感が伝わります。
2. カルチャー紹介
「うちは風通しの良い職場です」「若手が活躍しています」といった抽象的な表現では、他社との差別化はできません。
たとえば、「Slackで社長と新人が冗談を言い合っている」「上司との距離が近く、1on1ミーティングが週1で行われている」など、具体的なエピソードを交えて伝えることが効果的です。
実際の写真や、業務風景の動画を交えることで、言葉以上の説得力を持たせることができます。
3. 社員紹介
どんな人と働くかを知ることは、求職者にとって非常に重要な判断材料です。
年齢・経歴・入社理由・仕事内容・やりがいなどを、1人1人のリアルな声として紹介しましょう。
できればテキストだけでなく、写真・動画・音声なども活用することで「一緒に働くイメージ」が明確になります。
4. 一日の流れ/キャリアパス
実際に働くとどんな一日になるのか?
入社後はどんなステップで成長していけるのか?
これらを明確にすることで、求職者の不安を軽減できます。
新卒・中途それぞれのモデルケースを提示するのが理想です。
5. 求職者へのメッセージ
このページを見ている“あなた”に向けて語りかけるような、率直なメッセージを掲載しましょう。
社長や人事責任者からの一言、または社員代表からの言葉でも構いません。
重要なのは、画一的な文言ではなく、その企業らしいトーンで語ることです。
これら5つのコンテンツを丁寧に構成することで、採用LPは「ただの情報ページ」から「感情が動くストーリー」へと進化します。
SNSは“どこで”やるかより、“何を”伝えるか

採用活動においてSNSの活用はもはや常識になりつつありますが、重要なのは“媒体選び”ではなく“メッセージ設計”です。
各SNSの特性を理解し、求職者との接点を設計していきましょう。
- X(旧Twitter):スピード感のある社内イベントや日常のつぶやきなど、ライトな投稿で企業の人間味を演出します。タイムライン上で偶然見つかることが多いため、ユーモアや親しみやすさが重視されます。
- Instagram:社内風景や社員紹介、オフィスの雰囲気など、ビジュアル重視での発信が得意です。トレンドに合わせた投稿テンプレートやハッシュタグ活用で、企業の世界観を統一しましょう。
- YouTube:中長尺のコンテンツで深い共感を得るのに最適です。社長の想いや、社員インタビュー動画、新卒の1日密着など、「会社の中のリアル」を伝える場として活用します。
どの媒体でも共通して大切なのは、「誰に、何を伝えるか」を明確にしたうえで、一貫した世界観とトーンで発信し続けることです。
断片的な投稿や、媒体ごとに矛盾するメッセージは、企業イメージを崩す原因になります。
外注と内製の使い分け
採用におけるコンテンツ制作には、外注と内製をバランスよく活用することが大切です。
- 外注がおすすめのもの:採用LPの構築、プロの撮影・編集が必要な動画、ブランド設計やライティング
- 内製すべきもの:日常のSNS投稿、社員インタビュー、イベント報告など
特にSNSや動画の中で社員の言葉を発信する際には、現場の温度感が何より重要です。
台本通りの硬い文章ではなく、「うちの雰囲気」を自然体で表現できるようにしましょう。
企業の中の“当たり前”は、外から見ると非常に魅力的な情報です。
その“当たり前”を丁寧に拾い、言語化・発信する姿勢こそが、採用ブランディングの発信フェーズを成功に導く鍵となります。

第4章|採用ブランディングを“定着”につなげる

採用ブランディングは、内定を出した時点で終わるものではありません。
むしろ、本当のブランディングは“入社後”にこそ真価を発揮します。
いくら素晴らしい採用LPやSNSで応募者の心をつかんだとしても、入社後の体験が「聞いていた話と違う」となれば、早期離職につながりかねません。
この章では、採用ブランディングを定着率向上につなげるために必要な施策。
特に入社初日の体験設計、オンボーディングプログラム、継続的な改善(PDCA)の重要性について、具体的に掘り下げていきます。
入社初日から始まる“第二のブランディング”
新卒・若手社員にとって、最も緊張と不安が高まる瞬間は「入社初日」です。
どんなに前向きな気持ちで入社しても、初対面の先輩たちに囲まれ、業務も何も分からない状態で職場に立つのは、大きな心理的ハードルがあります。
このときに企業側がどれだけ“温かく迎え入れるか”によって、社員が「ここにいていいんだ」と感じるまでの時間が大きく変わります。
これは単なる気遣いではなく、ブランディングの第二フェーズとも言える重要なプロセスです。
たとえば、次のような取り組みが効果的です。
- ウェルカムメッセージの贈呈:入社初日のデスクに、チームメンバーからの手書きのメッセージカードを置いておく。それだけで一気に緊張が解けることもあります。
- チーム全員とのランチ:初日は、直属のチームメンバーとカジュアルなランチの時間を設けましょう。業務とは関係ない話をすることで、距離が一気に縮まります。
- 経営者の想いを語る時間:社長や経営者が、自らの口でビジョンや企業理念を新入社員に伝える場を設けることは、理念の体験型伝達として極めて効果的です。
これらはすべて、“企業文化を肌で感じる機会”であり、「体験型ブランディング」として、企業と社員の信頼関係を築く第一歩となります。
属人的ではないオンボーディングプログラムの設計
定着率を高めるためには、感覚頼りの教育では限界があります。
OJTがうまくいかずに、指導者によって当たり外れが出る。
これでは安心して働ける環境とは言えません。
そこで必要なのが、属人的ではない、体系的なオンボーディングプログラムです。
理想的には、以下のようなフェーズで構成される設計が求められます:
会社の理念や業務フロー、基本的なツール操作などを習得する段階。
ここでは心理的安全性の確保と、組織への適応が重視されます。
実務を徐々に担当しながら、上司やメンターからのフィードバックを受け、仕事の進め方を身につけていく時期。
主体的に業務を遂行できるようになり、自身の成長やキャリアを見つめ直すフェーズ。
中間振り返り面談や1on1の実施が有効です。
これに加え、月1回の振り返り面談や、入社3ヶ月・6ヶ月タイミングでのサーベイ、チーム内フィードバックの共有会などを実施することで、新入社員の状態を可視化し、的確な支援につなげることができます。
採用ブランディングのPDCAを回す

定着率を高める採用ブランディングを実現するには、「やりっぱなし」ではなく、継続的な改善サイクル(PDCA)の構築が不可欠です。
- Plan(計画):どんな人物を採用したいのか、どんな情報を伝えるべきか、どんな体験を提供すべきかを明確にします。
- Do(実行):採用広報・面接・オンボーディングの各フェーズで、設計した内容を実施します。たとえば、動画で社長の想いを伝える、初日にチームランチを設定する、など具体的に行動に移すことが重要です。
- Check(評価):定着率の推移や、早期離職者の退職理由、オンボーディングのフィードバックなどをもとに、効果を検証します。数値的なデータと定性的な意見の両方を集めましょう。
- Act(改善):評価結果をもとに、どこに改善の余地があるのかを見極め、次の採用・育成サイクルに反映します。
このサイクルを1年単位で定着させることで、企業の採用ブランディングは“進化する資産”として確立していきます。
まとめ|採用ブランディングは「共感」と「体験」で勝負する時代へ
採用がうまくいかない本当の原因は、「魅力がない」ことではなく「伝わっていない」ことにあります。
本記事では、採用ブランディングを構築するための4ステップを解説しました。
- 第1章では、求職者の価値観が「条件」から「共感」にシフトしている現状を明らかにし、採用広報と採用ブランディングの本質的な違いを紹介しました。
- 第2章では、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の再定義とインナーブランディングを通じて、社内外で“自社らしさ”を言語化・共有する重要性に触れました。
- 第3章では、採用LP・SNS・動画を活用した具体的な発信戦略を解説し、共感を生むコンテンツ設計と、成功事例から学ぶポイントを整理しました。
- 第4章では、採用後の“第二のブランディング”として、入社初日の体験設計やオンボーディング、PDCAによる継続的な改善の仕組みを紹介しました。
採用ブランディングとは単なる広告施策ではありません。
求職者に選ばれ、定着し、成長してもらえる企業になるために、今こそブランディングを“採用の本丸”に据えるべき時代です。



