会社説明会、「なんとなく説明して終わり」になっていませんか?
同じように会社説明会をしているのに、「あっちの会社には学生が集まって、うちは応募が増えない…」。
もし、そんな状況になっているなら、原因は「知名度」よりも「説明会の設計」にあるかもしれません。
今の学生は、1回の会社説明会で「この会社でやっていけるか」「自分らしく働けるか」をシビアに見ています。
一方で、多くの企業は今も「会社の沿革 → 事業説明 → 福利厚生」のような“会社都合”の構成で話してしまいがちです。
その結果、
- 新卒マネジメントに不安を抱えたまま採用してしまう
- 入社後ギャップが大きく、早期離職が増える
- 「せっかく採ったのに、なかなか定着しない」
という、採用・育成・定着の悪循環にハマってしまいます。
この記事では、「新卒向け会社説明会を、応募と定着につながる“体験の場”に変えたい経営者・人事担当者の方」向けに、
- なぜ今、説明会を見直すべきなのか
- 学生の心をつかむ全体設計の考え方
- そのまま使えるプレゼン構成テンプレートと話し方のコツ
- エントリー・定着につなげる双方向コミュニケーション設計
までを、具体的なステップで解説します。
なぜ今、新卒向け会社説明会を見直す必要があるのか

「説明会はやっているのに応募が増えない」企業共通の落とし穴
多くの企業が口をそろえて言うのが
「説明会にはそこそこ参加してくれる。でもそこから先に進まない」
という悩みです。
ここには、いくつかの共通点があります。
1つ目は、説明会の目的があいまいなまま開催していること。
「会社のことを知ってもらう場」「とりあえず情報提供の場」という位置づけだと、話す内容がどうしても“会社都合”になります。
2つ目は、学生の「知りたいこと」と企業が「話したいこと」にズレがあること。
企業は沿革・事業内容・強み・福利厚生を中心に話しがちですが、学生が本当に気にしているのは、
- 自分はどんな人たちと働くのか
- どんな1日を過ごすのか
- 3年後、どれくらい成長しているイメージを持てるのか
といった、より具体的で個人に近い情報です。
3つ目は、「話して終わり」になっていること。
学生が自分の言葉で質問したり、社員とラフに会話したりする時間がなければ、「なんとなく良さそうだけど、自分ごとにはなっていない」状態で終わってしまいます。
「たくさん来場したのに、エントリーが少ない」
こういった状況は、この3つのズレから生まれていることがほとんどです。
求職者の“企業選びの軸”が変化している

さらに、ここ数年で学生の企業選びの軸も変化しています。
かつては「安定」「知名度」「大企業志向」が強い傾向でしたが、今の学生はそれだけで企業を選びません。
- 自分の価値観と会社の考え方が合うか
- 早い段階から成長機会を得られるか
- 自分らしさを出せる環境か
- 働き方・キャリアの選択肢がどれくらいあるか
こうした“カルチャーフィット”や“成長実感”に重きを置く学生が増えています。
つまり、「良い給与・福利厚生です」だけでは選ばれない時代です。
会社説明会でも、数字や制度だけでなく、
- どんな価値観を大切にしている会社なのか
- それが日々の仕事や組織の空気にどう表れているのか
を、ストーリーを通して伝える必要があります。
新卒マネジメント不安・定着しない会社ほど、説明会設計が重要な理由
「新卒を採っても、ちゃんと育てられるか不安」
「入社してもすぐに辞めてしまう」
こうした不安がある企業ほど、実は会社説明会が非常に重要な役割を持ちます。
なぜなら、説明会は“最初のマネジメント”の場でもあるからです。
- どんな期待を持って入社してほしいのか
- 会社は新卒に何を提供できるのか
- どんなスタンスで働いてほしいのか
これらを説明会の段階で伝えておくことで、入社後の関係性づくりがスムーズになります。
「とりあえず来てくれた学生を、できるだけ多く内定に進める」という発想のままだと、入社後に「思っていたのと違う」「こんなはずじゃなかった」と感じる新卒が増えます。
一方で、説明会の時点で“リアル”も含めた本音を共有できていれば、「それでもここで働きたい」と思ってくれた人が集まり、結果として定着率も高くなります。
良い説明会が「入社前ギャップ」と離職リスクを減らすメカニズム
良い会社説明会には、共通する特徴があります。
- 仕事内容・忙しさ・難しさも、できるだけ具体的に伝えている
- 「大変なこと」だけでなく、「それを乗り越えた先の成長」までセットで見せている
- 実際に働いている若手社員が、自分の言葉で語っている
- 学生が質問しやすい雰囲気づくりができている
こうした説明会は、華やかな言葉で飾るのではなく、“リアルを誠実に伝える”ことで、入社前の期待値を適正化しています。
結果として、以下のような効果が生まれます。
- 「想像していた仕事と違った」というギャップが減る
- 「思っていたより大変だけど、その分やりがいもある」と前向きに捉えやすくなる
- 上司や先輩との信頼関係が築きやすくなる
つまり、会社説明会は単なる「採用イベント」ではなく、採用・育成・定着をつなぐ“スタート地点”なのです。
次の章では、このスタート地点をどう設計すれば、学生の心をつかみ、応募・定着につながるのか、その具体的な考え方をお伝えします。
学生の心をつかむ会社説明会の全体設計

説明会のゴール設定:「応募してほしい学生像」を明確にする
良い説明会づくりは、「ゴールの言語化」から始まります。
- どんな価値観を持った学生に応募してほしいのか
- どんなタイプの学生とは、あまりミスマッチなく関わりたいのか
- 説明会が終わったとき、参加者にどんな感情・印象を持って帰ってほしいのか
これらを、採用チームの中で明確にすり合わせることが第一歩です。
たとえば、「指示待ちではなく、自分から動ける人材がほしい」のであれば、以下のような設計が必要になります。
- 説明会の中に、簡単なグループワークを入れる
- 自分の考えをアウトプットする機会をつくる
逆に、ゴールがあいまいなまま企画を進めると、何を削って何を深堀りするべきか判断できません。
結果として、時間いっぱい情報を詰め込んだだけの、記憶に残らない説明会になってしまいます。
オンライン/オフライン、少人数/大人数の違いによる設計のポイント
最近は、オンライン説明会も一般的になりました。
オンラインかオフラインか、少人数か大人数かによって、設計のポイントは大きく変わります。
オフライン×少人数
- 社員との距離が近く、雰囲気を感じてもらいやすい
- 学生からの質問や対話を多く取り入れやすい
- 会社の雰囲気づくり・カルチャー訴求に向いている
オフライン×大人数
- 認知拡大や母集団形成に向く
- 一方通行になりがちなため、Q&Aや体験要素をどう入れるかがポイント
- スライドや動画を使い、メリハリのある進行を意識する
オンライン×少人数
- 地方学生や忙しい学生とも接点を持てる
- ブレイクアウトルームを使った座談会やワークが行いやすい
- カメラON/OFFのルールを事前に伝え、双方向性を意識する
オンライン×大人数
- 説明中心になりやすいため、チャットで質問を募集するなど工夫が必須
- 後半は、希望者向けの小規模座談会への誘導に使うなど、導線設計が重要
- 動画や事例紹介で、画面越しでも印象に残るコンテンツを用意する
大事なのは、「どの形式が良い・悪い」ではなく、自社のターゲット学生と採用戦略に合わせて、形式を“意図して”選ぶことです。
タイムライン例:60分・90分・120分それぞれの進行モデル
ここでは、実際に使えるタイムライン例を紹介します。
60分モデル(オンライン向け)
- オープニング・会社紹介(10分)
- 事業内容・仕事内容紹介(15分)
- 若手社員ストーリー紹介(15分)
- Q&A(15分)
- クロージング・今後の選考案内(5分)
ポイントは、最初の10分で「なぜこの会社が今、面白いのか」を伝えること。
その上で、若手社員のリアルなエピソードを挟み、単なる情報提供にならないようにします。
90分モデル(オンライン/オフライン共通)
- オープニング・会社のビジョンと採用の考え方(15分)
- 事業・仕事内容紹介(20分)
- 若手社員トークセッション(20分)
- 簡単なグループディスカッション or ワーク(20分)
- Q&A(10分)
- クロージング(5分)
学生同士・社員との対話の時間をつくることで、「この会社で働いている自分」をイメージしやすくなります。
120分モデル(オフライン向け)
- アイスブレイク・簡単な自己紹介(10分)
- 会社のビジョン・大切にしている価値観(20分)
- 事業・仕事内容紹介(25分)
- オフィスツアー or 現場見学(20分)
- 若手社員・先輩社員との座談会(30分)
- Q&A・アンケート(10分)
- クロージング(5分)
時間に余裕がある分、会社の空気を“体感”してもらうコンテンツを盛り込むことができます。
オフィスツアーや座談会は、定着につながるカルチャーフィットの確認にも有効です。
「企業の都合」ではなく「学生の不安」から逆算する構成づくり

最後に、全体設計でもっとも大切な視点は、「学生の不安」から逆算して構成を組むことです。
たとえば、学生が抱えやすい不安は…
- 本当に自分に合う仕事なのか
- ついていけるのか、すぐに辞めてしまわないか
- 上司や先輩はどんな人たちなのか
- 働く場所・働き方はどのくらい柔軟なのか
これらの不安に、説明会のどのパートで、どのように答えるのか。
先ほどのタイムラインに、「解消したい不安」を書き込んでいくと、構成に抜け漏れがなくなります。
全体設計ができたら、次は一つひとつのパートを「どう話すか」。
3章では、学生の心に刺さるプレゼン構成テンプレートと、具体的な話し方のコツを解説します。
刺さるプレゼン構成テンプレートと伝え方のコツ
オープニングで一気に惹きつける3つの要素
会社説明会の成否は、最初の5分で決まると言っても過言ではありません。
学生は、オープニングの数分で「この話を聞き続ける価値があるか」を判断します。
そこで意識したいのが、次の3つの要素です。
- ストーリー
創業のきっかけや、事業が生まれた背景など、「物語」を短く語ります。
例)「うちの会社は、創業者がある一人のお客さまとの出会いから始まりました…」 - ギャップ
業界の“当たり前”と、自社が変えようとしていることのギャップを示します。
例)「この業界では○○が常識でした。でも私たちは、それを変えたいと思っています。」 - 共感
学生が抱えている不安やモヤモヤに言葉を与えます。
例)「就活をしていると、『自分に合う会社って何だろう』と悩むと思います。
私たちも、実は同じ悩みからスタートした会社です。」
この3つを短く織り交ぜることで、「ただの会社説明」ではなく「一緒に考える時間になりそうだ」と感じてもらえます。
会社紹介で話すべきこと/話さなくていいこと
会社紹介のパートでは、つい情報を詰め込みたくなります。
しかし、学生が一度に覚えられる情報量には限界があります。
話すべきことは、次の4つに絞りましょう。
- どんな課題を持つお客さまに、どんな価値を提供している会社か
- 事業の全体像(メイン事業と今後伸ばしたい領域)
- 大切にしている価値観・行動指針
- 社員構成や拠点など、働くイメージにつながる基本情報
逆に、「細かすぎる歴史年表」「全てのグループ会社の説明」「売上の細かい推移」などは、後回しで構いません。
学生にとって重要なのは次の3点です。
・この会社は何をしているのか
・社会にどんな役割を果たしているのか
・ここで働く自分をイメージできるか
「仕事内容」と「成長イメージ」を具体的に伝える見せ方
仕事内容の説明では、1日のスケジュールやプロジェクトの流れを用いた具体的な例が有効です。
- 新入社員の1日
- 入社3年目社員の1週間
- 実際のプロジェクトのビフォーアフター
などを見せることで、学生は「なんとなく」から一歩踏み込んだイメージを持てるようになります。
また、成長イメージの提示も重要です。
- 入社1年目で身につけてほしい力
- 3年目で任されるようになる仕事
- 5年目以降のキャリアパスの例
これらを、実在の社員のストーリーとセットで紹介すると、説得力が増します。
例)
「この社員は、入社1年目で○○の担当になり、3年目には△△のプロジェクトのリーダーを任されました。
その過程で、××という壁にぶつかりましたが…」
離職率や評価制度など“聞かれたくない質問”への向き合い方
説明会では、離職率や評価制度、残業時間など、できれば触れたくない質問が出ることもあります。
しかし、これらを曖昧に濁してしまうと、かえって不信感を生みます。
- 事実を正直に伝える
- その背景と、改善のために行っている取り組みをセットで話す
例)
「正直にお伝えすると、3年前までは新卒の3年以内離職率が○%ありました。
原因は、配属後のフォロー体制が弱かったことだと分析しています。
そのため、今は…(メンター制度の導入・面談の頻度・研修の見直しなど)を行い、直近2年では○%まで下がってきています。」
このように話すことで、「完璧ではないけれど、きちんと向き合っている会社」という印象につながります。
新卒マネジメントの不安を逆に「魅力」に変える伝え方

「新卒を採っても育てられる自信がない」
「マネジメントに不安がある」
その気持ちを隠す必要はありません。
むしろ、「新卒と一緒に変わっていきたい」「組織づくりも含めてチャレンジしたい」というスタンスであることを、正直に伝えることで「一緒に会社を育てていく仲間」を求めているメッセージになります。
例)
「私たちは、まだ新卒採用や育成の仕組みを完成させた会社ではありません。
だからこそ、一緒に組織や制度をつくっていくことを楽しめる人と働きたいと思っています。」
これは、「整った環境でだけ働きたい学生」ではなく、変化を好み、チャレンジを楽しめる学生が集まりやすくなる伝え方です。
社員登壇パートの作り方(誰を出すか・何を話してもらうか)
社員登壇は、会社説明会の中でもっとも学生の心に残るパートです。
ここで重要なのは、「誰を出すか」と「何を話してもらうか」。
- 入社1〜3年目の若手社員
- チームをまとめるリーダー・マネージャー
- もともと新卒マネジメントに苦労したが、今はやりがいを感じている管理職
このように多様な立場の社員を組み合わせると、リアルな姿が伝わります。
話してもらう内容としては、
- 入社前に抱いていた不安
- 実際に働いてみてギャップを感じたこと
- それをどう乗り越えたか
- 今、どんなやりがいを感じているか
- これから会社をどうしていきたいか
といったテーマが効果的です。
原稿を読み上げるのではなく、“自分の言葉で話してもらうこと”が何より大切です。
エントリー・定着につなげる双方向コミュニケーション設計

一方通行にならないための質問タイム・ワークショップの入れ方
どれだけ内容の良いプレゼンを用意しても、説明会が最後まで一方通行のままだと、「聞いた」で終わってしまいます。
そこで、意図的に双方向の時間を設計しましょう。
- チャットや付箋で匿名質問を集める
- グループに分かれて、簡単なディスカッションを行う
- 「働く上で大事にしたいこと」を学生同士で共有してもらう
学生自身が「話す」「考える」時間をつくることで、会社との距離が一気に縮まります。
説明会後のフォロー施策(メール・SNS・座談会・OB訪問など)
会社説明会は、ゴールではなくスタートです。
説明会後のフォローが弱いと、せっかく興味を持ってくれた学生も、他社との比較の中で埋もれてしまいます。
具体的には、以下のようなフォロー施策が考えられます。
- 説明会参加者限定のフォローメール(Q&Aのまとめ・社員の一言コメントなど)
- SNSやnoteなどで、社員インタビューや社内の様子を継続的に発信
- 少人数の座談会や現場見学会への招待
- 大学のOB・OGとのカジュアル面談
ポイントは、「会社のことをもっと知りたい」と思った学生が次に踏み出せる“階段”を用意することです。
「この会社でやっていけそう」と感じてもらうための接点づくり
最終的に学生が知りたいのは、「ここでやっていけるかどうか」という感覚です。
その感覚は、情報量の多さではなく、「自分と似た価値観・バックグラウンドの人が活躍しているか」 で決まることが多いです。
たとえば、
- 文系出身・地方出身・留学経験なしなど、学生に近い属性の社員を紹介する
- 「入社当時はこんな不安があった」というエピソードを共有する
- 失敗談や迷いも含めて話してもらう
こうすることで、学生は「完璧な人だけが活躍している会社ではないんだ」「自分もチャレンジしてみようかな」と感じやすくなります。
定着まで見据えたメッセージ設計:入社後のサポート・育成体制の伝え方
早期離職の多くは、「入社前に聞いていなかった」「想像していた環境と違った」というギャップから生まれます。
これを防ぐためには、説明会の段階で、育成・サポートの仕組みをできるだけ具体的に伝えることが重要です。
- 研修の内容・期間
- 配属の考え方
- フィードバックや1on1の頻度
- メンター制度の有無
ここでも、「良いところだけ」を強調する必要はありません。
まだ整備途中の部分や、今後改善していきたい点も含めて話すことで、「一緒により良い環境をつくっていけそうだ」という期待感につながります。
自社向けにカスタマイズするチェックリストと次のアクション
最後に、この記事の内容を自社の説明会に落とし込むための簡単なチェックリストを用意します。
- 説明会のゴール(どんな学生に、どうなってほしいか)は明文化されているか
- 学生の不安から逆算した構成になっているか
- オープニングで、「ストーリー・ギャップ・共感」を盛り込んでいるか
- 仕事内容・成長イメージを、具体例やストーリーで伝えているか
- 離職率や評価制度など、聞かれにくいけれど重要なポイントにも触れているか
- 若手社員・管理職など、複数の立場の社員が登場しているか
- 双方向のコミュニケーション(質問・ワーク・座談会)を設計できているか
- 説明会後のフォロー施策が、段階的に用意されているか
1つでも「まだできていない」と感じる点があれば、そこが改善のチャンスです。
まとめ:会社説明会を「採用イベント」から「共感と覚悟を育てる場」へ
新卒マネジメントに不安がある企業や、定着に悩む企業こそ、会社説明会を“ただの説明の場”から、“共感と覚悟を育てる場”へと変えていく必要があります。
- 企業の都合ではなく、学生の不安から逆算した設計
- ストーリーとリアルを両立させたプレゼン構成
- 一方通行ではなく、双方向のコミュニケーション
- 説明会後も続くフォローと関係構築
これらを丁寧に整えていくことで、「なんとなく応募してくる学生」ではなく、「この会社で成長したい」と心から思ってくれる学生が集まるようになります。
そうして入ってきた新卒は、会社にとっても、本人にとっても、大きな財産になります。
まずは、次回の会社説明会の台本を見直すところから始めてみてください。
1つひとつの改善が、3年後・5年後の組織の姿を変えていきます。



